【東京】防衛省が、有事に負傷した自衛隊員に輸血する血液製剤を独自に確保・備蓄し、将来的に米軍との相互運用を目指していることが30日、分かった。自衛隊中央病院(東京都)が米軍の輸血手法を念頭に自衛隊員の血液を解析する研究を進めている。防衛省は南西諸島での衛生機能強化を掲げており、血液製剤についても南西諸島での運用を想定しているとみられる。
防衛省は2022年末に決定した防衛力整備計画で「戦傷医療における死亡の多くは爆傷、銃創などによる失血死であり、これを防ぐためには輸血に使用する血液製剤の確保が極めて重要」と記し、独自に輸血用の血液製剤を確保・備蓄する方針を打ち出した。23年度予算で自衛隊中央病院に関連器材を整備する費用として約9千万円を計上している。
政府として自衛隊独自で血液製剤を確保・備蓄する方針を掲げたことを踏まえ、自衛隊中央病院は公式サイトで公表した資料で、米軍との相互運用を目指して自衛隊員の血液を解析する研究を明らかにしている。
米軍のサイトによると、米軍は戦場での輸血について採取された血液をそのまま用いる「全血輸血」を推奨している。他の血液型に輸血した場合に輸血反応を引き起こすリスクが低いと判断されたO型の人から採取した「低力価O型全血(LTOWB)」を備蓄している。
自衛隊中央病院はこのLTOWBを念頭に「今後想定される武力攻撃事態などで日米が協同するためには衛生分野も相互運用性を高める必要がある」としている。研究を踏まえて血液製剤の共有も模索する可能性がある。
自衛隊中央病院はこの研究に関する資料で、現在の調達先となっている日本赤十字社では全血輸血ではなく、特定の血液成分を血液から取り出して用いる「成分輸血」が主流だと指摘。自衛隊病院として積極的に研究を進める必要性を強調した。
研究は24年3月末までの予定で、米軍の手法を参考にO型の自衛官の血清を解析する。