パソコンやスマホを使った小中高校などでのいじめは近年、急増している。文部科学省によると、2021年度は2万1900件に上り、統計を取り始めた06年度の約4・5倍に上った
SNSでは、いじめが深刻化しやすいとされる。
社会心理学者の綿村英一郎・大阪大准教授によると、「SNSいじめ」の大きな特徴は、いじめる側が罪悪感を感じにくい点だという。
SNSに限らず、いじめは「被害者への共感や同情」、「深刻度の認識」があれば起きにくいことが、心理学の実験で実証されている。
ところが、SNSでは相手が苦しむ様子を目の前で見ないことが多い。
「投稿者」「拡散者」など役割が多岐にわたり、一人ひとりの加担の度合いが小さくなりがちだ。
相手の何げない発言をネガティブに捉えて敵対視する「敵意帰属バイアス」にも陥りがちという。
いじめる側の投稿の内容を深く考えず、習慣的に「いいね」ボタンを押す人もいる。
その結果、いじめる側は自身の行為が周囲から「承認」されたと錯覚し、行為がエスカレートする。
同じメンバーでいじめが繰り返されれば、同調圧力が高まり、行為をやめるような指摘をしづらくなる。
いじめを認識しながら何も反応しない「傍観者」の存在も問題だ。
綿村准教授は「惰性で『いいね』を押さないことはもちろん、メンバー同士で『良くないよね』と声を掛け合うことが大切だ」と強調する。